本多流七道 〜 引取

引取 大三〜押大目引け三分の一の際を云う〜

引取は流儀によりては引分とも申しますが、日置の申し残されましたのは引取といふてあります。 何時の頃から引分と申し始めましたか判然分かりません。中古から始まったものか、夫れとも 其の以前から申して居ったのか其程は存じません。引取と申す箇条は、所謂打起してから次に 致しまする動作で、其の引取は向こふの弦を此の方へ引き取るので御座います。

烏兎の梯
烏兎の梯とは左右の拳に就て左を烏、右を兎に譬えて、其の梯となる所の矢は初め引き取る時分 は反り橋の様にならなくてはなりません、即ち中は平らより少し高く致すのであります。中高に 致しますれば其形は反り橋の形になるのであります。中は上がるというよりも、寧ろ下り勝ちの ものでありますから、初めは反り橋であっても、次第に引き収むるに従って平らになって参ります。

大三引け三分一
大三と申すことはづつと古くは申しましたが、中古は肘力と申しました。なぜかと申しますれば、 もと打起した弓でありますから、之を大凡矢束の三分の一たけの所まで引きて止めます。休む にあらず、一旦止めてそれから残りの三分の二を引きます。之を肘力と申しました。そこで 大三とは大は大事なる所、三とは引け三分の一の三で御座います。大三を分けて申しますれば 大目と、引け三分の一となります。押手の方の形が大事であるといふ所から大三と略語で申します。 三分一とは引け三分の一に致しまして、三分の二は収り所と致します。何の為めに三分の一を 引きて中止しまするか、之には大に理由のあることで御座います。又此所は至極大切なる所なので 御座います。なぜ大切であるか、其大切な所と申します訳は、是より弓の成り立つ所であるからで あります。そこで引け三分一といふものにして此所まで引込めば誠に姿勢も規矩も共に揃ふて居るか どうかを見る為めに、一寸此所で其釣合を考ひ調べます。残るところはまだ二分ありますから、強弱 を考へ、又過不及等の具合をもみることが、出来まする。恰好の良否、左右の拳の高下、肩の高下、 足踏の力が連続しあるか、体にゆるみの生じたる箇所ありや否やなどを調べて、そこで凡ての点が 完全であると我が内心に満足すれば後の二分を引き渡す、収まり所まで引きて其所に収まれば夫れで ちゃんと一本の現在が出来ます。斯くして現在の姿が備われば弓を引きたる全体が完備することに なります。

(此の外 「三心相引」、「三つの強弱」の伝あり。此処にては略す。)

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